誓約自治体の実践報告会2025(8/7、オンライン開催)

「世界首長誓約/日本」誓約自治体の実践報告会を、2025年8月7日15時~17時にオンラインで開催しました。
2024年のモニタリング報告により世界事務局からコンプライアントバッジを交付された自治体の中から、今回は、新たにコンプライアントバッジを取得した6自治体(岡崎市、上士幌町、山県市、富山市、大府市、一宮市)及び毎年バッジを更新している東京都の担当者がその取組を、①緩和策、②適応策、③今後の課題・挑戦、として1自治体約3分にまとめ報告しました。そしてそれらの発表に対し、名古屋大学の高野雅夫教授・持続的共発展教育研究センター長と白木裕斗准教授がコメンテーターとして参加し、誓約自治体の参加者のみなさんと意見交換しました。
6自治体からの報告の概要は次のとおりです。
【岡崎市】 令和5年度に環境省の「脱炭素先行地域」に選ばれ、中心市街地で2030年までに電力の脱炭素化を目指し、太陽光発電やLED照明を導入中。適応策の熱中症対策として市内にクーリングシェルターを設置し、市民とグリーンカーテンの取組も行っている。
【上士幌町】 農業・畜産が盛んな町で、畜産バイオガス発電によりエネルギー自給率100%を実現。資源循環型農業や自動運転・ドローンの導入、SDGs教育など、環境・デジタル分野で先進的な取組を実施中。2050年のゼロカーボン達成を目指し、脱炭素先行地域として全国62自治体と連携し、政策提言や協議を進めている。
【山県市】 森林に囲まれた中山間地域で、水栓バルブ製造が主要産業。ZEB施設の導入や再エネ活用を進め、適応策として保育園児と自然体験を通じた環境教育にも力を入れている。2050年のカーボンマイナス達成を目指し、脱炭素事業の創出に取り組む。
【富谷市】 再生可能エネルギーや水素エネルギーの活用を推進し、環境省の委託で低炭素水素の実証実験を実施。FCバスの路線運航、LED化、ZEB化、民間のこども園への太陽光パネル設置を支援。適応策はグリーンカーテン、クーリングシェルターの整備。
【大府市】 CO₂排出の約7割を占める産業部門に着目し、中小企業向けの脱炭素経営支援を実施。環境活動のプラットフォーム「大府市環境パートナーシップ」の活動は愛知環境賞優秀賞を受賞。適応策は災害に備える体制強化として、NTTと連携した太陽光発電設備やEV路線バスを導入。災害時の蓄電池活用を検討。
【一宮市】 廃棄物発電を主電源とする新電力会社を設立し、公共施設へのCO₂実質ゼロの電力を供給。適応策として、工場施設を中心にクーリングシェルターを整備。薬局71店舗を休憩場として開放している。今後、脱炭素をテーマにしたビジネスコンテストを開催しスタートアップや大学と連携し新技術の導入を図る。
【東京都】 大規模事業者にCO₂削減義務を課し、排出枠の取引も可能とする「キャップアンドトレード制度」を導入し、2023年度末には約3割削減を達成。中小事業者には「地球温暖化対策報告書制度」を適用し、2009年比で2割の削減を実現。適応策は、自然災害や水資源など5分野に対応する計画を策定し、災害廃棄物処理用コンテナの新設なども進行中。2030年のカーボンハーフ達成を目指す「ドライミッション東京戦略」を策定し、次世代型ソーラーセルの普及拡大、洋上風力発電の導入を通じ都市型の脱炭素社会の構築を目指す。
自治体の事例報告を受け、コメンテーターからは、自治体の規模や適応策の対象分野など、それぞれの自治体の持つ背景に即した対策が実施されその強みが活かされていることが評価されました。行政の施策だけでなく市民や事業者からの自発的な動きを広げることが重要で、様々な連携により「シンデレラストーリー」が生まれることを期待している、また行政として「制度」をつくることで脱炭素に向けて削減されたなどの成果や、各自治体の事業者との丁寧なコミュニケーションの工夫に対し高い評価が示されました。そのうえで、今後、階層を超えた連携が課題であり、特に若い想像力を活かした脱炭素の展開に期待が寄せられました。さらに、リスク評価や政策の優先順位づけについても、より実践的な知見の共有が求められていくと指摘されました。
発表自治体からの課題として、財源確保の難しさが多くあげられ、全体を通じて、自治体間の制度の共有や、企業・市民との協働、地域資源の活用による持続可能な取組が重要であることが共有されました。今回も気候変動対策に対するさまざまな取組の報告をいただき、現場ならではの声を聞くことができました。ご参加いただいた自治体のみなさま、ありがとうございました。